組曲「惑星」はホルストの代表曲として、ホルスト自身の名前以上に知られており、近代管弦楽曲の中で最も人気のある曲の1つです。この組曲は全部で7つの楽章から成り、それぞれにローマ神話に登場する神々にも相当する惑星の名が付けられています。ホルストは作曲にとりかかる1年前の1913年に、劇作家のクリフォード=バックスから占星術について教えを受け、占星術に傾倒していくようになり、その結果生み出されたのが「惑星」であると伝えられています。
今日のような知名度を獲得するのは、1961年頃カラヤンがこの作品を発掘し、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で紹介したことがきっかけで、それ以後演奏会などでしばしば取り上げられるようになりました。しかし組曲全体は4管編成の大オーケストラで特殊楽器も多く使用されることや、終曲には女声合唱が入ることなどもあり、コスト的な面からも全曲を通しての演奏の機会は必ずしも多くはありません。
しかし、第4曲「木星」の第4主題の魅力的な旋律は、単独で様々なジャンルに編曲され世界中で親しまれています。1921年セシル・スプリング=ライスによって“I
vow to thee, my country”(私は汝に誓う、我が祖国よ)で始まる歌詞が付けられ、英国の愛国的な賛歌として広く歌われるようになりました。また、しばしば吹奏楽やブラス・バンドのために編曲されている他、日本では2003年に平原綾香が「Jupiter」としてリリースし、大ヒットしています。
火星、戦争の神
日本では「木星」に次いでよく知られています。「惑星」の中でいちばん激しい曲で,サブタイトルどおり非常に戦闘的です。
金星、平和の神
火星とは対照的な平穏な感じの曲です。中間部にはヴァイオリン・ソロや星がきらめくようなチェレスタが出てきます。
水星、翼のある使者の神
スケルツォ。ホルスト自身はこの曲を「心の象徴」と述べています。この曲にもヴァイオリンのソロがあります。
木星、快楽の神
組曲中、最もよく知られています。スケルツォに近い性格を持ち、特に中間部のAndante Maestosoの旋律は単独でよく取り上げられます。
土星、老年の神
組曲中で最も長い楽章です。ホルスト自身はこの曲が最も気に入っていたといわれ、組曲中でも中核をなす曲と考えられます。
天王星、魔術の神
冒頭の印象的な4音(G, Es, A, H)は、ホルストの名前(Gustav Holst)を表していると言われ、曲中にも様々な形で取り入れられています。
海王星、神秘の神
女声合唱が加わりますが,舞台裏で「あー」と歌うだけです。最後は、女声合唱がフェードアウトしていきます。
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