「スケルツォ」はイタリア語で「冗談」を意味し、陽気で速いテンポの3拍子のおどけた小規模な曲を指しています。ベートーヴェンはそれまでの交響曲の第3楽章で伝統的に用いられていた「メヌエット」に代わって「スケルツォ」を積極的に取り入れ、交響曲の様式を作り上げましたが、ショパンはピアノソナタに用いるだけでなく、更に発展させて、極めて重く深刻な情緒を持った音楽に仕立て上げました。ショパンは生涯で4曲のスケルツォを作曲しましたが、中でもこの第2番は最も有名で、優雅さやロマン的な転調などで人気が高い作品です。
ショパンのスケルツォ第2番は、ショパン27歳の1837年に作曲され、アデーレ・フュールステンシュタイン伯爵令嬢に献呈されています。ショパンがスケルツォ第2番を作曲したこの年は肺結核を発症し、また恋人マリア・ヴォジンスカとの恋の終わりと、女流作家ジョルジュ・サンドとの交際が始まりつつあった時期で、そのことが、この曲に大きな影響を与えていることは容易に想像ができます。同年には後にピアノソナタ第2番の第3楽章となる「葬送行進曲」も作曲されています。
曲は、変ロ短調の印象的な激しい和音の交錯で始まり、その後、変ニ長調に転じ、アルペジオの伴奏に乗って、美しく流れるような甘美な旋律を奏でます。全曲にわたる華麗なアルペジオや華やかな難技巧、美しい転調の中にショパンの深刻な情緒が凝縮されている作品です。
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