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 変わったピアノ曲 


黒鍵しか弾かないピアノ曲
片手のためのピアノ曲
14台のピアノのための曲
世界一長いピアノ曲
変わった題名をもつピアノ曲


黒鍵しか弾かないピアノ曲

 ショパンの「12の練習曲」作品10の中の第5番は「黒鍵のエチュード」の名で知られています。変ト長調(フラット5つ)で作曲されたこの曲は、右手による主旋律の全てが黒鍵によって演奏されることから、この通称がつけられています。(第66小節の2拍目に白鍵のファが一ヶ所ありますが。)

 この曲は華やかで演奏の機会も多いのですが、ショパン自身はあまり高く評価していなかったようです。それはクララ・ヴィーク(シューマンの妻でピアニスト)がこの曲を演奏したことについて、ショパンは「黒鍵のために書かれたということを意識して聴かないとあまり面白くないこのような曲を、なぜわざわざ選んだのか」というような意味のコメントを残しています。(1839425日のフォンタナへの手紙より)

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片手のためのピアノ曲

 片手のためのピアノ曲とは、右手もしくは左手だけで演奏する曲で、現在まで1000曲以上あると言われています。片手の練習や、片手が使えない人のために書かれた曲ですが、音域や演奏効果などから左手用のものがほとんどです。

 片手のピアノ曲は、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハなどが練習曲として書き始めましたが、19世紀に入ると、練習曲と共にピアニスティックな演奏会用作品が作られるようになります。20世紀に入ると第1世界大戦で右手を失ったオーストラリアのピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタイン(1887年〜1961年)は右腕を失ったものの演奏活動を続け、生活もかなり裕福だったため、多くの有名な作曲家に左手だけで演奏可能な作品を委嘱しました。
 中でもラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」、プロコフィエフのピアノ協奏曲第4番、ヒンデミットの「ピアノと管弦楽のための作品、ベンジャミン・ブリテンの主題と変作品21など秀作が多く、ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」はオーケストラの演奏会でもよく取り上げられています。


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14台のピアノのための曲

 アメリカのピアニスト兼作曲家のルイス・モロー・ゴットシャルク(1829年〜69年)は技巧的なピアノ曲や編曲ものを書き残しましたが、その中に、ワーグナーの歌劇「タンホイザー」の「行進曲」をピアノのために編曲した作品があります。実際に初演され、喝采を浴びたとも伝えられています。

 何台ものピアノを用いた作品については、ピアノ・フェスティバルのような特別な演奏会のために、オーケストラ曲が大掛かりな連弾(816手)のために編曲されるというケースがあります。

 ちなみに、1984年の2度目のロサンゼルスオリンピック大会では、グランドピアノを50台並べて、50人のピアニストが生でガーシュインを演奏しました。上には上がありますね。さすが、アメリカはショー・ビジネスの国です。



世界一長いピアノ曲

 ギネスにも登録されているピアノ曲の中で一番長い曲は、フランスの作曲家エリック・サティ(1866年〜1925年)の「ヴェクサシオン」です。ヴェクサシオンとは「嫌がらせ」、「屈辱」という意味ですが、52拍からなる1分程度の曲を840回も繰り返すという曲です。しかも「ゆっくりと」という指示があるので、全体の演奏時間はじつに18時間ほどにもなります。

 「ヴェクサシオン」は200455日放送の「トリビアの泉」で紹介され、実際に3人のピアニストが交替で演奏したところ、全て弾き終えるのに18時間18分かかりました。

ちなみに、永遠に終わらない曲というのもあります。ショパンのマズルカ作品7-5は終止のない作品として知られていますし、サティの「スポーツと気晴らし」中の第16曲の「タンゴ」のように永遠に繰り返しされるという指定がある曲もあります。



変わった題名をもつピアノ曲

 「ジムノペディ」などの曲で知られるフランスの作曲家エリック・サティ(1866-1925年)は、「音楽界の異端児」とか「音楽界の変わり者」などと称されながら、西洋音楽に大きな影響を与えた作曲家ですが、作品に奇抜なタイトルを冠することでも知られています。中でも「官僚的なソナチネ」「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」「冷たい小品」「梨の形をした3つの小品」「胎児の干物」等々、こういった奇妙な題名は、サティの題名によって作品を判断しようとする人々への皮肉、または警告でもあるようです。