ピアノを弾くためには長い指が必要、と大抵の人が思っているかもしれません。それでは手の小さな人はピアニストにはいないのでしょうか。ところが中村紘子さんや、アシュケナージさんのように手が小さくても巨匠といわれるピアノストも多くいます。
ピアニストの横山幸雄さんは、自身の著書「ピアノQ&A」の中で、専門的にピアノを弾くのに必要な最小限の手の大きさは、9度が押さえられる大きさだとしています。9度がとどく大きさであれば、それより鍵盤1つ分狭いオクターブを押さえるのに幾分余裕が生まれるからだと、説明をしていました。
また故園田高弘氏は、音大の試験官をしているとき、「どんなに良い演奏をしても、手が小さい人は不合格にする」と語っていたようです。それは、手の小さい人を差別扱いしているのではなく、むしろ逆に、手の小さい人にこれ以上、ピアノで苦しい思いをさせたくない、という親切心だというのがほんとのところでしょう。
実際には、手が小さい人は、今の鍵盤サイズのピアノを弾くのに、かなり無理をして手を広げながら弾くことになるため、本来の正しいピアノ演奏法が身に付かないというようなハンデがあることは否めませんが、手が小さいというただそれだけの理由で断念しなければならない、というのは理不尽なことのように思われます。
手の小さな人でも努力と工夫によってそれを克服している人も多くいるという事実が、それを証明していることでしょう。そしてこれは、あくまで、ピアノニストとしてやっていく上で必要な手の大きさですので、ピアノを趣味で弾いている方にとっては、悲観する必要は全くないでしょう。
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