TOPピアノの話・雑学ピアノの鍵盤(音域)について


  ピアノの鍵盤(音域)について


 ピアノはイタリアのクリストフォリによって1720年代に発明されました。その当時鍵盤は54鍵しかありませんでしたが、その後より幅広い表現力を求める作曲家やピアノメーカーによって次第に音域が拡大されてきました。

 モーツァルトの時代は61鍵、ベートーヴェンは61鍵、68鍵、73鍵ピアノを使用していました。ベートーヴェンで興味深いのは、その時々にピアノ製作会社から贈られ所有していたピアノの音域をめいっぱい使って作曲してきたということです。ピアノソナタ「月光」は、61鍵のピアノで、その後エラール社から贈られた68鍵のピアノで、ピアノソナタ「ワルトシュタイン」が、ブロードウッド社の73鍵のピアノでピアノソナタ「熱情」が作曲されました。必要に応じて音域が拡大され、ピアノの性能向上と音域拡大に多くの貢献をしました。

 その後19世紀のショパン、リストの時代には内部もかなり改良されて85鍵が登場、19世紀末のドビュッシー以降は現在と同じ現在の88鍵7オクターブ1/4のピアノが定着します。しかし、実際には88鍵のピアノの「最高音の3音は必要ない」と言っているピアノメーカーもあるほど、最高音の3音は使われることはなく、唯一ラヴェルの左手の為のピアノコンチェルトに使用されているくらいです。

 なお現在、ベーゼンドルファー社では88鍵より低音域が9鍵多い97鍵ピアノを生産しています。このピアノの最低音部の9鍵の弦は、ほかの鍵を弾いたときにその弦と共鳴して豊かな響きを与えるためのもので、実際にその鍵が演奏されることはほとんどありません。そのため、間違って弾いてしまわないように、白鍵が黒く塗られていたり、蓋が付けられたりしています。