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  ピアノの歴史


 一般的には、現在のピアノの原型はイタリア、パドヴァ出身のバルトロメオ・クリストフォリによって発明されたとされています。クリストフォリがいつ最初にピアノを製作したのかは明らかではありませんが、メディチ家の目録によると1700年にはピアノがすでに存在していたことが知られています。現存する3台のクリストフォリ製作のピアノは、いずれも1720年代に製作されたものです。

1722年製のピアノ(ローマ・イタリア国立楽器博物館)


 この時代には弦を張った鍵盤楽器としてはクラヴィコードとチェンバロが普及しており、クリストフォリ自身もすぐれたチェンバロ製作家でした。クリストフォリの最大の功績は、ハンマーが弦を叩いたあと、弦と接触し続けない、というピアノの基本機構を独自に開発した点にあります。このクリストフォリのピアノアクションがピアノの原型となりました。

 その後、ピアノ製作は18世紀後半にウィーンを中心に盛んとなりますが、ウィーン式のピアノは、木のフレームに1音2弦の弦を張り、革で覆ったハンマーを持っていました。また、現代のピアノとは黒鍵と白鍵の色が逆のものもあります。モーツァルトがピアノ協奏曲やピアノソナタを作曲したのは、こうした楽器でした。モーツァルトの時代のピアノは、イギリス式のピアノや、現代の一般的なピアノよりも柔らかく、より澄んだ響きを持っていました。

 その後、1790年から1860年頃にかけて、現代のモダンピアノへの大きな変化を遂げていきます。ピアノの革新は、作曲家や演奏家からのより力強く、持続性の高い響きの尽きぬ要求への反応であり、また、高品質の弦を用いることができ、正確な鋳造技術により鉄製フレームを作ることができるようになるといった、同時代の産業革命によって可能となりました。時代を追って、ピアノの音域も拡大し、モーツァルトの時代には5オクターブであったものが、モダンピアノでは7⅓オクターブか時にはそれ以上の音域を持つようになりました。

 初期のピアノの技術革新の多くは、イギリスのブロードウッド社の工房でなされました。ブロードウッド社は、次第に大型で、音量が大きく、より頑丈な楽器を製作し1790年代には5オクターブと5度、1810年には6オクターブの楽器を作っています。ハイドンとベートーヴェンにも楽器を送っており、ベートーヴェンはその後期の作品で、拡大した音域を利用して作曲をしています。

1820年代になるとパリ、エラール社のダブル・エスケープメント・アクションの開発で、鍵が上がり切っていないところから連打できるようになり、素早いパッセージの演奏が容易となりました。これがショパンやリストの愛用するところとなります。

その後、フェルト・ハンマーが1826年にジャン=アンリ・パップにより導入され、より大きなダイナミックレンジを得ることが可能になります。1844年には音色の幅を広げるソステヌート・ペダルがジャン・ルイ・ボワスローによって発明され1874年にスタインウェイ社によって改良されました。現在に至るグランドピアノは基本的にこの時代に完成されました。