ユーフォニアムの始まりは、1843年にヴァイーマルのコンサートマスターであったフェルディナント・ゾンマーが開発したゾンメロフォンであるという説が最も有力です。元々はオイフォニオン(Euphonion)と呼ばれたが、この名前はギリシア語の“euphonos”「良い響き」に由来しています。
1843年のゾンマーのゾンメロフォンが登場する以前は、セルパン※1やバスホルン、オフィクレイド※2などが金管低音の役割を担っていました。1835年に、C.モリッツによってF管のピストン式バステューバが作られ、続いて1837年にはそれよりも管の短いB♭管のピストン式テノールテューバが作られたことにより、以後、B♭管のピストン式テノールテューバがユーフォニアムへと発展し、F管のピストン式バステューバはバスそしてコントラバステューバへと発展し、金管の低音域をテナーとバスという別々の楽器で演奏するようになりました。
一方、ベルギーでは同じ1843年にアドルフ・サックスが、高音域から低音域までを同一の音色でカバーする一連の金管楽器「サクソルン」を製作し、1845年に特許を取得します。サクソルンのうちのピストン式バスのボアを拡大させ、さらにイギリスで開発が続けられて現在のユーフォニアムが登場したとも考えられます。
ゾンメロフォンが開発された翌年の1844年、ウィーンのフランツ・ボックとフェルディナント・ヘルが、ゾンメロフォンを改良させた「オイフォニオン」(Euphonion)という楽器を作りました。「オイフォニオン」はゾンメロフォンのボアをさらに拡大させた、現在のユーフォニアムに近い太い楽器であり、これがユーフォニアムの始まりというのが一般的な説です。
ゾンマーによる開発と彼自身の演奏活動を初めとして、「オイフォニオン」という名のソロ楽器としてその地位が築かれ、そして各社の開発ラッシュと刺激により、100年もの歳月を費やして、現代のユーフォニアムが生み出されました。一般的なユーフォニアムの形状は、1930年代のイギリスのブージー社製のユーフォニアムとほとんど変わってはいないようです。
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