基本をマスターする
 

 リズム感をよくする        
 低音を出す
 腹式呼吸をマスターする
 音痴をなおす
 自分の地声を鍛える
 声を出しやすい姿勢は
 体の力みをとる
 小さくても聞こえる声





リズム感をよくする

 リズム感が悪いとせっかく高音や低音がうまく出せていても下手に聞こえてしまいます。

 リズム感は鍛えるのが難しいと思われがちですが、ちょっとした練習やコツでかんたんに正確なリズムが取れるようになります。

 リズム感は生まれつきの運動神経にも絡んできますが、鍛えることで改善することができます。普段から音楽のリズムを身体に感じるようにしていると、部分的にでもリズムを押さえることが出来るようになります。

 リズム感を感じるには「裏拍」を意識すると「表拍」を感じやすくなり、リズムがとりやすくなります。

 例えば4拍子の場合は1、2、3、4(イチ ニー サン シー)と拍をとりますが、これが「表拍」です。それに対して、イチト、ニイト、サント、シイトと「ト」を入れて拍をとってみてください。そして(イチ)ト、(ニイ)ト、(サン)ト、(シイ)トの( )の部分を発音しないでト、ト、ト、ト、とリズムをとってみましょう。
 
 これが「裏拍」といわれますが、この裏拍を感じるのを習慣づけているとリズム感がよくなります。

 歌を歌うときには「ト」の部分を正確に捉えてリズムのコンディションを整えて準備をしてから、実際に歌いだしをスタートすると、しっかりしたリズムが感じられるようになります。





低音を出す

 歌の中で効果的に裏声を出せると、より表情ゆたかな歌になります。自分の地声よりも高い声を出せると、歌える曲の幅もさらに広がってくるでしょう。

 裏声をうまく出せないという人は、裏声を出すための喉の使い方を覚えておくと出せるようになります。


 まず最初に、「うー」と可能な限り声のトーンを上げていきましょう。これ以上高くならない、というところまできたら、いったん呼吸を止めます。そして笛を吹くような感覚で「ヒュー」と喉から空気いっしょに声を出してみましょう。このとき声帯は震わせず、呼吸を押し出すようにすると裏声を出しやすくなります。

 うまくできない人は「ヒュー」と繰り返し発音してみると、だんだんと感覚がつかめるようになります。慣れてきたらスピードを上げ、地声と裏声の切り替えを素早くできるようにしていくと、歌の中で裏声を出せるようになります。

 ただし、無理に高い声をだそうとすると喉をいためてしまいますので、自分の喉の状態と相談しながら負担がかからないように行うようにします。





腹式呼吸をマスターする
 
 歌うときや楽器の演奏をしたりするとき、腹式呼吸はとても大切です。腹式呼吸をすると、肺に多くの空気を取り込め、それだけで息が長持ちして声をだすのが楽になります。人間は赤ちゃんのときには誰でも腹式呼吸を行っています。また、寝ているときは自然に腹式呼吸になっているものです。人間が本来持っている呼吸を思い出せばいいのです。

 まず、仰向けになってみましょう。そして、お腹に手をあててゆっくりと呼吸をすると、お腹が上下しているのがわかるはずです。

 つまり、どんなに腹式呼吸を意識していなくてもいつの間にか自然と腹式呼吸になっているのです。立ち上がって呼吸をする際にも同様のイメージをもちましょう。


 お腹から呼吸をするには、ふだんから腹筋を鍛えておくことが大切です。腹筋を鍛えると肺活量が増えますし、長く息を持たせることもできます。また、健康にも良いうえ、正しい姿勢もとりやすくなります。

 腹式呼吸をマスターする方法としてペットボトルを使用して鍛える方法があります。

 2リットルのペットボトルをひとつ用意します。そして息を思い切り吐いてからペットボトルをくわえ、口から一気に息を吸います。

 きちんと腹式呼吸ができると、誰でもペットボトルがボコッとつぶれるはずです。つぶれないのは、のどや口だけで息を吸っている証拠です。


 最初からうまくいかなくても大丈夫です。まずは、お腹に手を当て、息を吸ったときにお腹がピクッと動くか確かめます。きちんとお腹で息を吸えていれば、お腹が動くはずです。お腹に意識を集中して、動くまであせらず繰り返しましょう。この練習を続けると肺活量がぐんと増えます。




音痴をなおす

 音痴の方の絶対的な特徴は音を聞いているようで、聞いていないことにあります。ということは、歌うときに自分の声を聞き取れれば音程がつかみやすくなるのです。

 まず、歌を歌うときに片耳をしっかりと手のひらでふさぎます。このまま声を出すと、自分の声がいつもより聞き取りやすくなるはずです。

 これは周囲の音を遮断すると同時に、骨伝導によって自分の声がカラダの内部から響いてくるからです。片耳で自分の声を聞き、もう片方の耳で音楽を聞けば、それだけでいつもより正確な音程を取れるはずです。

 うまく音程を調節できない人は、自分の声が上がっているのか下がっているのかをつかめていないことがあります。また、音程が聞き取れていても、声がきちんと出ていなかったら正確な音で歌えません。


 まずは正しい音をきっちり耳に覚えさせる事から始めてください。家にある鍵盤楽器などで、何度も何度も音程を繰り返し聞くようにすると自分の声の高低をつかみやすくなります。




自分の地声を鍛える

 地声とは自分の本来の声、普段の会話の中で使用されている声のことです。歌をうまく歌うにはこの地声を鍛えていきます。

 地声を使うよい点は、強い声や柔らかい声など、声でいろいろな表現をしやすいということです。また、のどへの負担も少ないので、よく響く声を長く出すことができます。

 声がかすれたり低かったりして、地声が好きでない人もいると思いますが、地声はその人本来がもっている最も魅力的な声です。個性的な歌を歌うのには地声を鍛えていきます。


 地声を鍛えることで高い音もしっかり出るようになります。地声を少しずつ高くしていくとある箇所(換声点)にくると声がひっくりかえりますがこの声が裏声です。

 この換声点の通過を目立たなくするようにして地声と裏声を一本化することができると声域が広くなり表現力が大幅にアップします。

 なぜ、地声と裏声の換声点があるのかというと、地声と裏声は使う筋肉がかわってしまうからです。

 地声の時には、声帯筋という筋肉を主に使用しており、裏声の時には、輪状甲状筋という筋肉を主に使っています。この筋肉を使い分けるのではなく、少しずつ使い方を変化させることにより、裏声と地声の差が目立たなくなります。

 練習方法としては、「あー」と一音で低音から高音まで上がっていく、下がっていくことを繰り返し、地声、裏声の変り目をなくすようにトレーニングしていくことが求められます。


声を出しやすい姿勢は
 
 声を出しやすくするコツは自然な姿勢をつくることが大切です。そして、安定した歌唱をするためには、余分な力が抜けたリラックスした感じと歌いやすい姿勢が大切です。


体をリラックスさせる

 歌う時に必要以上に力が入ってしまうと声がよくでません。特に上半身は充分にリラックスさせ、特に胸から上については力が入らないようにします。歌う時に必要以上に力が入ってしまうと声がよく出ず、自由なヴォイスコントロールができません。

 このリラックスした感覚というのは、思いっきり体に力を入れて、その後、一気に力を抜いた時の感覚です。両手を組んで高く上げ、思いっきり腕を伸ばします。そして、ストンと一気に腕の力を抜いて下へ落とします。この感じがリラックスした感覚です。


歌いやすい姿勢とは

・背筋を伸ばして、脚を肩幅程度に広げてまっすぐに立つ・両腕は脇に脱力し自然に垂らす。
・重心をほんの少しだけ前にかける。腰に中心を感じるように。
・顔はまっすぐ前に向けて、やや視線を上にあげます。あごは引きます。
・全身をリラックスさせる。




体の力みをとる

 人と話したり、歌ったりする前に、カラダに力が入りすぎているとうまく声が出ないものです。また、自分では力んでいないつもりでも、日々の生活ではいつのまにか力が入ってしまっていることもあります。

 そこで、次の方法でカラダの力みを取り、声を出しやすい状態をつくっておきましょう。


 まず、首をすくめるようにグーッと力を入れて肩を持ち上げてください。3秒ほどそのまま我慢したら、フーッと息を抜きながら一気に肩を落とします。これを3回ほど繰り返すと驚くほど力がぬけるのがわかるはずです。

 次は、ゆっくりと首を回しながら声を出す方法です。まずは、上を向いて息を吸い、「あー」と声を出しながら、5秒ほどかけてゆっくりと首を1周させるようにします。

 1周したら、上を向いた状態でリセットし、続いて逆回しにして何度か繰り返します。もし、首に痛みを感じたらすぐに中止してください。


 これは、まず首を回すことで筋肉をほぐす効果が期待できます。そして声を出してゆっくり呼吸をすることで、カラダの力を抜くと同時に発声練習にもなります。簡単ですが、短い時間で行える効果的な方法なので、ぜひ試してみてください。




小さくても聞こえる声

 一般に小さい声は聞きづらいものですが、きちんと発音すれば声は小さくてもちゃんと伝わるものです。

 小さくて聞き取りづらい声になるのは、声といっしょに呼吸を出しすぎているからです。つまり、小さくてもしっかりした声を出すためには、呼吸をだしすぎないようにするのがポイントです。

 大きな声と小さな声の違いは、口の中の空間の大きさによります。大きな声は喉の奥の空間を広げ、逆に喉の中の空間を小さくすると声は小さくなります。空間の大きさは、舌の根元の位置を上下に動かすことで調整できます。

 ちなみに、口の前にティッシュペーパーをたらしてみると空気の量がよくわかります。「あー」と声を出しているときに、声といっしょに必要以上の空気が出ている(息が抜けている)と、ティッシュペーパーがふわっとめくれます。