人前で歌うときは

 人前で歌ったりするとき、大きな声が出せれば、それだけで多くの人には伝わります。大きな声が出せることはたしかに重要です。しかし、いつでもただ大きな声で、歌えばいいのではありません。

 あたり前のことですが、ひとりで歌うときには聞く人のことを考える必要はありません。しかし、人前で歌うときは、あくまでも聞く人がいて成り立つものです。

 ですので、相手のことを考えて声を出すときには、まったく状況がかわってきます。よりうまく歌いたいときにも、ただ大きな声をだすだけではない、細やかな表現が必要になるのです。

 ですので、歌を歌うときは、相手にどんなことを伝えたいのか、また聞いた相手がどう感じるかを考えることが第一です。

 そうすれば自然と、どんな声で、どんな歌い方をすればいいのかがわかってくるはずです。相手との関係によって表現を使い分けることが重要です。

                   歌をうたう女性

歌をうまく聴かせるコツ

 歌に自信がないからカラオケは嫌い、という人は多いと思います。しかし、たとえ音程がとれなくても、リズム感に自信がなくても、歌を、とくにカラオケで上手に聴かせるコツがあります。それは、「始め」と「終わり」だけをきちんと聴かせるということです。

 歌の多くは、Aメロ→Bメロ→サビという順番に構成されています。ここで大切なのはAメロの第1声です。第1声をしっかりと出せば、まず「おッ」と人をひきつけられます。そしてサビは一番盛り上がるところですが、歌い出しを小さくして途中から声量を上げ、ふり幅を大きくします。

 曲の終わりは、音をのばす歌であればかなり長く声を伸ばしていく、フェードアウトする曲では息を抜いてささやくように終わらせるのがコツです。これは曲によって使いわけるといいでしょう。


 歌を聴いている人は多くの場合、1曲をまるまる通して聴き入っているわけではありません。最初と最後だけでも「声を演出」して聴かせると、上手な歌だと思わせられるものなのです。




歌うときの心構え

 カラオケなどで歌うとき、慣れていないとどうしても緊張してしまうものです。緊張すると、普段はうまく歌えるはずが思わぬ失敗をしてしまいことも。そこで、うまく歌いたいときの心構えを紹介しましょう。

 通常、歌を歌うときは、「人に聞いてもらいたい」「人の注目を集めたい」「ただ気持ちよく歌いたい」という3タイプの考え方があります。

 とくに大勢の人前で歌うときに意識してしまうと「うまく歌わないと」とか「目立たないと」などと思ってしまいがち。この考え方が緊張のもとです。


 そこで、歌をうまく歌うときには、「ただ気持ちよく歌いたい」というように、周りの目を気にせず歌うことをいちばんに考えましょう。歌は自分が歌って楽しいのが大事。楽しく歌えば、自然と良い歌い方になっているものです。

 人を意識せずに歌うことができれば、あとは歌の歌詞や内容などをイメージして、「どんなふうに歌うか」を考えながら歌ってみましょう。自然と歌に気持ちがこもり、結果的に、より人に伝わるように歌えるはずです。




マイクの上手な使い方

 カラオケなどでマイクを使うときに効果抜群のワザです。ここで気をつけるのは「スイッチの入れ方」「マイクの持ち方」「マイクの角度」の3点です。

 まずスイッチは前奏と間奏の部分では切っておきましょう。歌わないときにスイッチを入れると、余計な音が入ったり音が反響したりしてしまいます。

 次にマイク持ち方ですが、マイクのもち手だけつかむと澄んで通る声、指を集音部分にかけると少し太い声に聞こえます。指をかけるときは、マイクの半分より下、指2本分くらいまで、マイクの中心をつかむと、音がこもってしまいます。

 最後にマイクの角度です。マイクは真上から音を当てるのが基本です。横から音を当てると、ほとんど音を拾いません。この性質を生かし、マイクは少し斜めに持ち、口と垂直になるように構えます。

 声を小さく聞かせたいときは、指や手首で角度を調節。同じ声でもマイクの角度によって強弱をつけることができます。

 ちなみに近くにスピーカーがあるときは、なるべくスピーカーから離れた場所で歌うほうが声がよく聞こえます。またマイクとスピーカーが近いと、マイクから「ピー」という甲高い音が鳴る「ハウリング」という現象が起こってしまいます。





息継ぎのコツ

 歌いなれていないと、息継ぎのタイミングがなかなかつかめないものです。また、息継ぎのタイミングが合わないと、語尾を伸ばすところで伸ばせなくなってしまうかもしれません。そこで、歌の途中でうまく息継ぎをするコツを教えましょう。

 まず、息が切れそうになったら、無理に息を吸うのではなく、一気に息を吐いてしまいます。すると自然に必要な空気を口から吸いますので、素早く息継ぎが出来るはずです。水泳で息を吸う際のコツと同じです。

 また、サビの前や大きな声を出す前には、お腹の風船に空気を入れるイメージで口から大きく息を吸い込み、いったん息を止めます。そのまま発声すると大きな声になりますし、息も長く持つはずです。

 そして、カラオケで上手に歌うには、画面の歌詞を見続けないことです。画面を見ていると息継ぎのタイミングを逃してしまいがちなので、歌詞をぱっと見たら息継ぎのタイミングを自分ではかりながら歌うと良いでしょう。





息継ぎで歌の表情をだす

 歌っていると、どうしても息継ぎのときに声が止まってしまうことが多いものです。しかし、息継ぎも立派な声のひとつです。息を吸う「スー」という音、吐く「ハー」という音、こういった呼吸音をあえて歌にいれてしまうことで、より歌に彩りが出てきます。

 たとえば、プロの歌の中でも、声の最後に「ハー」という息を吐く音を聞かせることがあります。雰囲気があってハスキーな感じがでて、なんだかすごく難しいテクニックを使っているように感じませんか。でも特に難しいことはありません。

 歌の中に呼吸を取り入れるには、「声を出す前に息を吸う」、「息を吐きながら声を出す」、「声を出したあとに息だけ吐く」の3つのやりかたがあります。それさえわかっていればあとは実践のみです。

 最後に自分の呼吸を確認する方法をひとつ。声を出すときに紙を1枚、顔のすぐ前にかざしてみてください。呼吸をしているときには紙が揺れ、声を出しているときは紙がビリビリ震えるので、自分の歌と呼吸の状態がすぐにわかります。





アクセントのつけ方
 
 声を出すとき、アクセント(どこを強く発音するか)はとても大切です。同じ大きさの声でも、アクセントしだいで聞く人の印象はまったく違ってきます。

 明るく大きな声に聞こえるためには、最初の1語目から大声で発音しないこと、2語目により大きな声を出すように意識するのがコツです。


 たとえば「おはようございます」というとき「お」ではなく2語目の「は」を大きく発音してみましょう。「お」を一番大きく発音すると、次第に声が小さくなっていく印象を与えてしまいます。また最初から大声を出そうと意識しすぎることで、息が上ずってしまうかもしれません。

 「お」よりも「は」を大きく発音すれば、全体的に声が大きく聞こえるうえ、言葉の響きよりも明るくなり、非常に聞き取りやすい発音になるはずです。「こんにちは」というときも同様。「こ」より「ん」を意識することによって、より元気のいい印象になります。歌を歌うときはもちろん、人前で話すときなどに、このテクニックをぜひ試してください。




緊張をほぐすには

 人前で歌ったりしゃべったりするとき、だれもが緊張した経験を持っていることでしょう。緊張は決して悪いことではありません。適度な緊張は、気が引き締まり、頭がさえることがあります。

 ただし、緊張しすぎてしまうと、体が思うように動かず、声も出なくなってしまいます。緊張しすぎると、のどがつまり、呼吸が苦しくなることがあります。


 そんなときは、まず落ち着いて呼吸をすることから始めましょう。息を大きく吸うのではなく「ハッハッハッ」と息を細かく吐き出します。意識して息を吐くことで、続けて自然に息を吸うことができます。

 次に、上を向いて頭を左、右、左、右と倒します。続いて下を向いて同じように頭を左、右、左、右と倒します。首を動かすことで、緊張して動きにくくなった筋肉とのどがほぐれて、声がだしやすくなります。

 どれも簡単なことばかりですが、普段は意識して行動に移す機会は少ないはずです。まずは試してみましょう。


 歌を上手く歌う方法 
 リズム感をよくする  ビブラートのかけ方
 低音を出す  裏声を出す
 腹式呼吸をマスターする  感情を込める歌い方
 音痴をなおす  ミックスボイスを出すコツ
 自分の地声を鍛える  こぶしを効かせる
 声を出しやすい姿勢  鼻濁音できれいな発音を
 体の力みをとる  七色の声を使い分ける
 小さくても聞こえる声で  息継ぎのコツ
 人前で歌うときは  息継ぎで歌の表情を出す
 歌を上手く聴かせるコツ  アクセントのつけ方
 歌うときの心構え  緊張をほぐすには
 マイクの上手な使い方